廃陸の旅団
そしてあまりに隔絶された力の差はカムイの中から「逃げる」という選択肢すらも消し去ったのだった。
カムイはただただ立ち尽くすしかできなかった。
あらがうことも、逃げることも、命を乞うことすらもできずに。
「初歩の術なんだが私が若い頃から気に入っている術がある。さようならカムイ……」
詠唱もフォースの流れすらも見えず、カムイは術を使われた自覚すらないままに、その術に取り込まれてしまっていた。
「『ターピュレンス』」
ハイマンスのそれはリリーのそれとは全くの別物で。
体の周りを乱気流が覆ったのではない。
部屋全体、恐らく孔気拡散壁がなければケルセウム市街をも巻き込んでこの乱気流が発生していたことだろう。
カムイにはそれの流れが見えている。
しかし余りにも巨大すぎる乱気流の渦のなか、見れば見るほど複雑怪奇。
相殺することなどおろか、防御・回避すら不可能だった。
「…………悪い。クラナド。。。。」