廃陸の旅団
語られる真実
廃陸の旅団による二度目のアンバー・タワー襲撃から一月が流れた。
どこもかしこもがその話題で持ちきりだったのも束の間。
今となってはもう過去のこととなってしまっていた。
旅団員86名死亡。
旅団長である"氷空"のジンと"使霊"のシルファは生死不明。
そして生存確認が唯一されているカムイは軍の地下牢獄で監禁されていた。
B.A.S.E.の被害は旅団に比べたら少なく、負傷者125名。
死者2名に留まっていた。
そんな頃、カムイはようやく意識を取り戻した。
目の前には治癒してくれていたスクルドの優しい顔があり、妙に安心した。
そこは暗い牢獄の中だった。
「ハイマンス坊と戦り合ったそうじゃな。坊やと戦って生きていたのは幸運じゃった。いや奇跡と呼ぶのが一番しっくりくるやもしれんの。」
ゆったりとした口調。
低く響きの良い声。
優しく暖かなフォースがカムイの傷をみるみる癒していく。
「……とても人間のレベルじゃありませんでした。あらがう事すらかなわなかった。あの人はいったい。」
ハイマンスのことを思い出しただけで体中に激痛がはしり気を失いそうになる。
スクルドは濡らしたタオルでカムイの汗をぬぐい言う。
「ハイマンスは史上唯一、七つの職務に認定された男じゃ。虹神のハイマンス、またの名をセブンス・マスターなどと呼ばれておるの。」
カムイの薄れいく記憶の中。
わずかだがジンとハイマンスの攻防が残っていた。
「剣、呪、波、糸、武、弓、工の資格を持ち。総監になる前はスリンダーの隊長をしておった時期もある。」
歴史に名を残す人といえど職務は三つが限度とされていた。
それを越す者は"神"と付く通り名を与えられ、文字どおり崇拝の対象となる。
ハイマンスはまさに神の域に達していた、と直接対峙したカムイにはよくわかった。
「カムイよ……ワシはなヴァルハラを目指すことを否定したりはせんよ。否定できんのじゃ。」
「……どういうことですか?」
そして明かされる真実にカムイは愕然とするのだった。
「……かつてハイマンスとワシも目指していたのじゃよ、カムイと同じくヴァルハラをの。」