廃陸の旅団

土煙の中から再び顔を出すジン。

「重層結界……とんでもない術編み出したもんだね。」

土煙を払いながら、ゆっくりとゆっくりとアニスに近づいていく。

「対象の動きを奪う『束縛結界』を一層目に、回避することを出来なくし。本来ならばブラインド(目隠し)として使う『補助結界』で空間内を濃霧で満たす。」

バリッバリッ。と音を立てる紫電が怪しくジンを照らしだしている。

「そして最後に『呪術結界』で、濃霧に満たされた空間に落雷を発生させれば……相手は回避することも叶わず雷撃に喰われるってわけだ。」

アニスの額を冷たい汗が伝う。

それはアニスが忘れていた感覚だった。

恐怖。

それを感じた時、アニスは平静を失う。

「うぉぉぉぉおっ!!」

結界もなしにジンに飛び込んでいくアニス。

ジンは少し哀しげにうつむき、小さくため息を吐いた。

「何度言っても無駄か……仕方ない『天ら……」

ジンが何かをしようとした腕を掴み、アニスを蹴り飛ばす。

二人の間にいきなり現れた灰色のマントに身を包んだ大男。

髪は長く背中くらいまで伸びている。

「人の仕事の手掛かり持ってるヤツを簡単に殺すなよジン。」

マントがひらりと揺れ、男の右腕が見えた。

そこにはジンの頬に付いているタトゥーと同じタトゥーが刻まれている。

「あんた……オスカー!!」

「久しぶりだなボウズ。」

アゴ髭を撫でながらオスカーはにやりと笑った。


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