廃陸の旅団
灰色のマントがなびく。
「オスカー。あんたが何故こんな所に?」
ジリジリと歩み寄るオスカー。
ジンは両手のフォースを解除する。
「無属民に拉致されたアーカーの娘を捜してたんだよ。」
「アーカーの娘……"舞孔-ブコウ-"のスクアロか。」
カムイと同じく十三歳でB.A.S.E.入りを果たし、翌年、異例の早さでダンサー隊長に抜擢された少女。
洗練された艶やかな舞、円舞の様に滑らかで力強い蹴撃が有名であった。
そして何より彼女の存在を知らしめたのが、彼女がアーカーとして生み出した得意能力にあったと言われている。
「ああ。恩師の孫娘だ助けないわけにゃいかねーだろ。」
オスカーは床に倒れているアニスの元に駈け寄ると、無理矢理に身体を起こさせる。
「おまえさん達が連れ去ったアーカーの娘はどこだ?」
胸ぐらを捕まれアニスは足が浮くほどの高さまで持ち上げられてしまう。
「はっ。……教えるとでも思っているのか?」
オスカーを睨み付けるアニス。
オスカーは愉快そうに笑うと、アニスを放り投げる。
「ま、ナンバー2ごときに最初から期待しちゃいなかったがな。行くぞジン。」
「ちょ、何であんたに仕切られなきゃいけないんだよ。」
オスカーが部屋を去る。
ジンがそれについていこうとした瞬間。
「揃いも揃って甘いな……『魔鍠牢-マコウロウ-』」
背中を向けているオスカーとジンをアニスの結界が飲み込む。
「ちっ……面倒くぇ。」
「げっ。」
オスカーが孔気武具を作り出すのを見て、ジンはすぐに地面に伏せた。
「『真空波』」
ゴォォォォッ。と言う凄まじい音と共に放たれた真空波が、容易く結界を破り、部屋丸ごと吹き飛ばした。
「相変わらずバカげた威力だなオスカー。」
地面に伏せていたジンが立ち上がりながら、無残な姿になってしまった部屋を見ながら、あきれ顔で言った。
「ちょっと撫でただけなんだがな。」
オスカーは自分の身の二倍くらいの巨大な孔気刀を解除してそう言い、部屋から出ていった。