廃陸の旅団
「マールっ!!!!」
灼熱の火柱は天井を焼き崩し、地面を溶かした。
そこにマールな姿は無かった。
「お嬢さんは燃え散りました。次はあなたの番ですよカムイ。」
にやりと笑った歯だけがフードの奥から見えた。
「何なんだ……何なんだオマエは!!」
緑柱眼を発動し孔気刀を創りだし、カムイは男に飛び掛かる。
男はゆっくりとそのフードを取るのだった。
「――なっ!?」
男の顔を見た瞬間、カムイの足が止まる。
冷や汗が身体を伝い、言い知れぬ畏怖に手が震えた。
「私は"白焔-シラノホムラ-"のミルファ。以後お見知りおき頂く必要はありませんよ?あなたは今ここで燃え尽きるのですからね。」
ミルファの顔全体はヒドイ火傷に包まれ、皮膚がただれている。
マントから覗く首筋や、腕にも同じ症状が見て取れることから、おそらく身体全体に重度の火傷を負っているらしい。
普通ならそこまで広範囲に渡り火傷を負うと人間は生きてはいられないのだが、その強靱なフォースと執念により命を繋ぎ止めているようだ。
「おいで『レッド・テイル《白き炎蛇》』」
ミルファの右手から白い炎が舞い上がり、それがうねりをあげながら蛇の形を成していく。
白蛇はまるで生を与えられたかのようにミルファに巻き付き、カムイを睨み付ける。
「レッド・テイルお食べ。」
ミルファがそう合図すると白蛇が一気にカムイを丸呑みにしようと、アゴを外し巨大な口を広げる。
一瞬にしてカムイを飲み込む白蛇が――
「『真空波』」
強力な風によって掻き消される。
「これは懐かしい。あなたにやられた傷が疼いてしかないのですよ……オスカー!!」
いつの間にか入り口に立っていたオスカー。
その手には巨大な剣が握られていた。
オスカーはミルファの崩れた顔を見る。
「はっ。相変わらず気味の悪い顔のまま生き永らえているんだなミルファ。」