廃陸の旅団
アンバー・タワーを後にした二人は、カムイの家へと向かうことにした。
そこはアブソリュートから生徒達に支給されるホテルではなく、まさに廃屋そのものだった。
「…………。」
「オンボロだが、雨風は凌げる。慣れたら別に問題はないんだよ。」
壁も床も屋根もボロボロで、所々が腐り穴が開いている。
玄関の扉も歪んでしまっていて、半分開けっ放しの様な状態だった。
カムイはクラナドを平然と中へ招き入れる。
「あ、お邪魔します……」
クラナドはあまりにも想像と掛け離れていたカムイの生活に驚きを隠せなかった。
勿論ある程度のことは普段のカムイへの周囲の態度から、予想はしていた。
けれども、クラナドが考えていたような甘いものではなくて、クラナドはただ言葉を失ってしまっていたのだ。
そんなクラナドの様子に気付いたカムイがどこか哀しげに聞く。
「驚いたか……?」
その静かな声に、クラナドは初めてカムイが自分と同じ人間なのだと感じた。
どんなに強くても、どんなに頭が良くても、カムイはまだ十四才の子供なのだ。
周囲からヒドイ扱いを受け、両親とは会うことすら出来ず、悲しくないわけがない。
怒りを感じないわけがないのだ。
クラナドはずっとカムイは強さで、そんなものは押し殺しているものだと思っていた。
だが、目の前で震えるその瞳に映ったのは紛れもなく……
「うん、ビックリした。でも……それだけだよ。」
クラナドのいつもの少し困った笑顔。
「……そっか。」
「うん、それだけさ。」