廃陸の旅団
中に入ると月明かりが屋根の穴から入ってきて部屋の中を照らしていた。
カムイはボロボロのクッションをクラナドに渡すと、自分はほこりだらけの床に直に座った。
クラナドも渡されたクッションをしいて座る。
「さて、クラナド。スフィアって実際どういう風に使うんだ?俺スフィア学は専攻してないから。」
「あ……うん。色々と使い道はあるんだけどね。」
カムイはクラナドの様子が少しだけおかしいことに気付いていた。
何かそわそわして、落ち着かないでいるように見えるのだ。
「まず、代表的なのがアクセサリーとして身につけてフォース使用の際に増幅器として使うことだね。」
無造作に置かれたレッド・スフィアが月明かりで、赤く不気味に光っている。
見ているだけで、その光に飲み込まれそうになる。
「それから専門的な話になれば、スフィアは熱性液化温度が低いから鉱物と一緒に溶かして武具にすることとかもできるよ。最後は……」
クラナドは何かを言いかけて口を閉ざす。
不自然なその様子にカムイが尋ねる。
「――?クラナド、最後の利用法はなんなんだ?」
クラナドの目がレッド・スフィアの反射した月明かりに照らされ、赤く染まっていた。
カムイはその時、言い様もない不安を感じずにはいられなかった。
「ううん、ゴメン。その二つくらいかな。まぁスフィア研究をしている人なら他の活用法も知っているかもしれないけど、一般人のボクにはそれくらいしか。」
そう言って笑うクラナドだったが、いつものあの柔らかさが無く、少しカリカリしているような感じすら見受けられる。
「クラナド……」
カムイが心配して話し掛けようとしたのだがクラナドは強引に話をそらすのだった。
「そうだ、レッド・スフィアはかなり貴重だから安全な場所に隠しておいた方が良いよ?盗賊とかに狙われるかもしれないし……ね。」
その紅き石は人々を魅了し、その血の如き赤い光で狂気に誘(いざな)う。