廃陸の旅団
老人の家に入ると本棚がたくさんあり、ぎっしりと本がつまっていた。
壁には魔術用の杖や箒、それにローブや帽子がかけてあるが、長く使われてはいないようだった。
「お座りなさい。今お茶を持ってこよう。」
三人をテーブルにつかせると老人は台所へと向かった。
術で火を点けるとヤカンが一瞬にして煙を上げる。
そのすぐ後に香ばしい紅茶の香りがカムイ達のいる部屋にまで漂ってきた。
老人は四人分のティーセットとケーキを持ってくると席に着く。
「このくらいのもてなししかできないが遠慮なく。ケーキのおかわりもある。」
そういうと老人は三人のティーカップに紅茶を注ぎ、最後に自分のにそそいだ。
三人はじっと老人を見ている。
その視線に気が付いた老人が慌てて言う。
「挨拶がまだだったな。私はクロノ・ブラックス。そこらのじいさんより遥かに歴史に詳しい歴史学者だ。」
クロノの本棚のほとんどは確かに歴史の本で埋まっている。
他には魔術の本や、哲学書などがあった。
「歴史学者!?じゃあアリオスの占いはこの人か。」
「まだ断定はできないけどな、話は聞いておいて損はないだろう。」
コソコソと耳打ちをしているジンとカムイをクロノが不思議そうに見ている。
「あっ、えっと……クロノさんはスフィアについてはご存知ですか?」
みんなが名乗り合うとカムイはそう切り出した。
「さん、などと付けなくても良い。そうだな……スフィアは私の興味の直接的な対象ではないが、スフィア戦争についてなら君達がどこかしらで習った以上のことを話すことができる。」
クロノは三人の表情を伺うと、微笑んだ。
「では、聞かせてあげよう。」