廃陸の旅団

「セイクリッド・モースは知っての通り世界各地の宗教の集合聖域になっている。世界の所有物であり、世界とは隔絶された場所なのだ。」

クロノは話を区切るとケーキを三人にすすめた。

しばらく間を置いて、三人がケーキを口にしたのを見ると再び話始める。

「なれば当たり前に、所有権の問題が起こる。第一発見者が総祭司だったことも大きな問題だ。総祭司は全ての宗教に平等でなければならないからな。」

この世界に数多ある宗教を統べる者、総祭司にはあらゆる権限が与えられている。

「総祭司様が見つけられたのなら尚更、ジンの言った通りに使われるはずじゃないの?」

ケーキをぺろっと平らげたマールが、口にクリームを付けながら尋ねる。

「勿論、総祭司はそうするつもりだったよ。しかし各宗教はそれを良しとしなかった。」

クロノの手がわなわなと震える。

「皆、エターナル・スフィアの力を欲し、欲望に取り憑かれてしまったんだな。口論は確執を生み出し、確執が人を狂気に奔らせ、狂気は争いを招く……これが世界規模になりスフィア戦争が起こることになったのだ。」

クロノは湯気の出なくなった紅茶を少しだけすすった。


< 263 / 583 >

この作品をシェア

pagetop