廃陸の旅団
「しかし、傷を負ったのは軍も同じだった。ほとんどの兵士のスフィアは暴走し兵士の精神を悉く破壊した。」
「皆クラナドみたいになっちゃったんだね……」

マールの小さな呟き。

誰一人として何も言おうとはしなかった。

「しかしそれも、研究の面では成功と言えたのかもしれん。ある一定の量のフォースを持つ者はスフィアに汚染されず、スフィアによるフォース増幅効果を十二分に受けることが判明した。」

「ある一定の量とは?」

「うむ。各隊長に任命された者の中から半数いるかいないかだったと聞いたな。レッド・スフィアにより莫大な恩恵を受けた1人に彼の"双剣"がおる。あやつくらいの力がなければスフィアに汚染されてしまうのかもしれん。」

そこでカムイはあることを思い出し背筋がぞっとした。

「軍は…軍の開発したバトルシュミレーションシステムの最高レベル――ニーガル中将用プログラムをクリアした者にレッド・スフィアを与えています。実際僕も貰い、友人が取り込んで暴走しました。」

見え隠れし始めた軍の裏側に誰もが言葉を失った。

カムイは開けてはいけない扉に手を掛けてしまったのかもしれない。

「そうか……軍はまだあのような実験を続けているのか。……クラナドとはその友人のことと見て間違いないかな?」

クロノは今までとは違う柔らかな口調でマールに聞く。

マールはゆっくりと頷いた。

「そうか……クラナドのことだがスフィアの融合消滅に挑んだのか。やはりマールは素晴らしい才能を持っているな。」

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