廃陸の旅団
宣戦布告
アストンは導穴のフォース量を計測しているメーターを覗き込みレポートに記入していた。
すると誰も乗っていないはずの導穴のフォース量が揺れアストンは導穴へと振り返る。
「この揺れ……1人じゃない。複数……侵入者か!?」
導穴の使用申請もなくこのB.A.S.E.本部にまで潜り込もうとするのは、軍の力を侮る者か真正面からでも軍を潰せると奢る者のどちらかだ。
しかしどちらにも共通して言えること、それは軍に潜り込める時点で只者ではない。ということだ。
「まずい近い……早く兄さ、ニーガル中将に知らせなくては。」
慌てたアストンが無線を落とした。
耳から外れた無線はカラカラと音を立てながら床を転がっていく。
アストンがようやく無線を手にした時だった。
「しまった……!!」
導穴から姿を現した侵入者。
そこには思いがけぬ少年の姿があった。
「……テリア?まさかテリアなのかい!?そうだウリアは?ウリアも来ているんだろう。」
「アストン准将……」
歩み寄るアストンからテリアは逃げてしまった。
テリアはマールにしがみついている。
「そうか……僕が恐いのか。僕が……憎いのか。」
再会の喜びにほころんだアストンの顔、今は後悔に満ちた寂しげな顔をしている。
「この子とウリアを自分がB.A.S.E.に入る為に、実験体として軍に渡したくせに、よくそんなことが言えるわね!!」
テリアやウリアの悲しみを知るマールが、我慢できなくなってアストンにそう叫んだ。
「違うんだ……あれは。」
「何が違うっていうの?あんたのせいでウリアはテリアを守る為に……守る為に。」
最後の言葉を飲み込んで泣きだしてしまったマールを見てアストンはウリアの死を理解した。
テリアがマールの手をぎゅっと握る。
「そろそろ交替の人が来てしまう。僕の部屋へ来てください。テリア達のこと全てお話します。」
哀しげな目でテリアを見つめてアストンはそう言い、四人をつれてアストンの部屋へと向かった。