廃陸の旅団
金庫の前でカムイを睨み付けているのは紛れもなくクラナドだった。
その手にはレッド・スフィアを持っている。
「あちゃあ、バレてたんだ……いつから気付いてたんだい?」
クラナドは悪びれた様子もなく笑う。
そしてカムイを完全に敵として見ていた。
カムイにも自然とそれは伝わる。
「レッド・スフィアをクルー少佐から渡された時からお前の様子はおかしかった。確信したのはお前が家から出る時に物欲しそうな目で金庫を見ていた時。」
カムイに見透かされていたことを知ると、クラナドは大声を出して笑った。
まるで狂ってしまったかのように。
「さっすが天才は観察力が違うね。ボクみたいな凡人には真似できないよ。」
「クラナドお前……」
クラナドは頭を抱え、怒りを抑え込む。
「B.T.だってそうさ。ボクには歯も立たなかったレベルも君にとっては朝飯前だもんなぁ。」
クラナドの笑いが止まり、沈黙が訪れる。
「……ふざけるなよ。」
ドッと溢れだしたクラナドのフォースは憎悪に満ちていた。
「お前みたいに生まれた時から持っているやつには、ボクみたいな凡人の苦労なんて分からないだろ。」
そして、カムイに見られてしまったことでクラナドが今までため込んでいたものが一気に弾け跳んでしまった様だった。
「さっきは言い掛けて止めてしまったけど、スフィアの最も有効で最も危険な使い方を教えてあげるよ。それはね――」
クラナドはレッド・スフィアを口まで持っていくと、それを躊躇なく飲み込んだ。