廃陸の旅団
「僕と兄さんは本当に仲が良かった。僕がいじめられたらすぐに兄さんがやって来ていじめっ子を退治してくれたんだ。兄さんは僕のヒーローだった。」

アストンがジュースをテリアに渡すとテリアは受け取らなかった。

アストンはジュースをテリアの前に置く。

「兄さんと引き裂かれてしまった僕は、その日からずっと憧れてた。前のように僕らが笑って暮らせる日がくればいいとね。その心は歪んでいたけど……僕に爆発的な成長を与えた。」

何度もテリアを見ては微笑むアストン。

目を逸らされる度にアストンは哀しげに笑う。

「僕は独自に研究したクローン技術を以てしてニーガル兄さんを取り戻すことを誓った。」

最愛の兄を失ったアストンの悲しみの幼少体験が、カムイには他人事とは思えなかった。

家族を失う悲しみはカムイもマールも痛いほどに知っているからだ。

「失敗もたくさんしたが7年の歳月を経て僕は兄さんを……ウリアを造り出すことに成功した。」

アストンが間をとったのでカムイが尋ねる。

「なぜ自分のクローンまでも造る必要があったんですか?」

アストンはコーヒーをぐびっと飲むと話を続ける。

「僕は自分だけでウリアを造り出した。しかし当時不可能と言われていた人体クローンの成功は、軍の耳に入ってしまうのは避けることができなかったんだ。」

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