廃陸の旅団
「軍は僕に研究施設に入るようにと勧誘してきた。僕は断った。何故なら僕の目的である兄さんとの日々はもうすくそこだったんだから。それでもクローン技術が欲しい軍の取った手段――」
アストンの怒りに満ちた表情にテリアは驚く。
「そうか――軍はウリアをアストン准将から奪い、脅したんだ。」
話の経緯、そしてアストンの表情からカムイはそれを悟ったのだった。
アストンは小さく頷く。
「そう、ウリアを返して欲しかったら研究施設内でクローンを造れ。と言われた。」
「そんなの……ひどい。」
マールの顔にも怒りが浮かぶ。
「また兄と離れてしまう恐怖から、僕は軍に従うことに決めた。そうするしかなかったんだ。」
アストンの手が小さく震えているのが、真正面に座っていたテリアにだけは見えていた。
ようやくテリアが口を開く。
「父さんが利己的な考えでウリア兄ちゃんを軍に売ったんじゃないことは分かった。でもまだ、僕を造り出した理由を答えてないよ。」
テリアの声にアストンはしばらく聞き入っている様にも見えた。
「軍に従ったからといって本当にウリアを返してもらえるかどうかは分からなかったからね。最悪ウリアを独りにはしないように、僕と同じ悲しい思いをしないで済む様にとテリアを造ったんだ。」