廃陸の旅団
「僕は新たに造り出すニーヴァスが戦地におもむくことは無いようにと、テリアには人を超えた力を宿さなかった。ま、それを理由に軍はウリアを返してはくれなかったけどね。」

「つまり軍はクローン技術を使って兵士を造り出すつもりだったってわけだ。」

ジンの言葉にアストンが頷く。

「そして、軍は代わりに少佐の地位を僕に押しつけ、B.A.S.E.に無理矢理に入れた。」

裏での軍はいったい何をしたくて平気で人を傷つけているのだろうか、考えるだけでむなくそが悪くなる。

「軍はこうも言った。完璧なニーヴァスを造り出したらウリアとテリアを解放してくれる。とね。」

カムイは机をドンと叩くと大声で言う。

「そんなあからさまな――!!」

アストンは落ち着いている。

「そう。あからさまな嘘だ。もちろん気付いた僕はマターになることを理由に研究から離れた。力を付けていつか二人を取り戻そうと思ってね。」

少しずつだが、テリアの瞳からアストンへの憎しみは消えていた。

「軍はウリアとテリアを模倣してニーヴァスをつぎつぎと造り出していった。しかし軍のマルテリウム技術を以てしても完璧な模倣はできかった。」

アストンはまた笑顔でテリアを見る。

「軍のニーヴァスには心がないんだ……」

その言葉にテリアがはっとした。

ウリアとテリアには確実に兄弟の絆があった。

しかし一緒にいたニーヴァスから、そんな感情を一切感じなかったのだ。

感情に似たプログラムはあっても、それは戦闘での勝率を少しでもあげるための手段の一つに過ぎなかった。

「どうして僕らには心があるの?」

「そんなの、僕が兄さんを本当に愛していたからさ。願いは力になるんだよ」

そう言って笑うアストンが、テリアには眩しく見えたのだった。


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