廃陸の旅団

「テリア!!どうして……?」

アストンは自分の目を疑った。

目の前に映る光景を認識することができないでいる。

「父さん……大丈夫?」

虫の泣くような小さな声。

テリアはアストンにそう頬笑みかけた。

放心してしまい何も応えられないアストン。

「僕ね……父さんのこと恨んでた。僕とウリア兄ちゃんを捨てたから。でも、違かったね。ごほっ。」

口の中いっぱいに血が溜まっていたのだろう、テリアは大量に吐血をしてしまう。

「実際に父さんと話したら父さんはそんなことできる人じゃなかった。僕ね、父さんに本当はお礼が言いたかったんだ。」

アストンは混乱する頭でテリアの言葉を一字一句聞き逃さないようにしていた。

それがどうあっても最後の会話になることが分かっていたからだ。

「僕らを造ってくれてありがとう。ウリア兄ちゃんと過ごした時間は本当に楽しかっ……」

「グチャッ、グチュ。ふぅ、腹の足しにもならねぇ。」

最後の言葉を言い切る寸前にテリアはネオに食われてしまった。

「あんたよくも!!許さないんだか……ら!?」

ネオへの怒りに全フォースを集中したマールだったが、得体の知れない膨大なフォース圧で座り込んでしまう。

辺りを見回したマール。

カムイもジンも怒りに満ちた力強いフォースを放っていたが違う。

ネオの邪悪なフォースですら、それの前では霞んで見えていた。

「あ……アストン?」

そう、マールほどのフォース使いをも畏怖を感じさせ、莫大な量のフォースを放っていたのはアストンだったのだ。

「よくもテリアを……許さない。お前は絶対に僕が――」

怒りを顕にするアストンを見てネオは嘲笑っている。

「殺すか?」

静かにネオを見据えるアストン。

その冷たい瞳は今までのアストンのものとは違かった。


「お前は塵すらも残らないくらい完全に消滅させるよ。」

アストンの低い声。

カムイとジンですら目を合わせることができなくなっていた。


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