廃陸の旅団
騒ぎを聞き付けた軍人がどんどん研究施設に集まってくる。
それに少し遅れてハイマンスがやってきた。
「ご、ご苦労様でありますハイマンス総監。」
ハイマンスを見かけた軍人達は緊張した面持ちでハイマンスに敬礼をする。
「ほぉ、孔気拡散障壁を破壊するとはなかなかの呪術者だな。」
アストンによって破壊された孔気拡散障壁を見てハイマンスが言う。
そこへゆっくりと近づいてくる一人の男がいた。
「この障壁は我々の通常の力でも破壊されないように設計されている。軍内部の者に我々と同等かそれ以上の力を持つ者はいないはずだが……」
ハイマンスは冷静に観察しながらそう言い、横を見た。
「誰か心当たりはいないかね?……ニーガル中将。」
ハイマンスにそう聞かれニーガルは少しだけ、返答を考え答えた。
「……いえ私には全く。」
そう言ったニーガルではあったが本当は一人だけ心当たりがあった。
実の弟であるアストンならば障壁を破壊することができるのをニーガルは知っていた。
「そうか。では……この件は君に任せるとしよう。好きにやると良い。」
そう言い残してハイマンスはアンバー・タワーへと入っていった。
「好きにやると良い。か。私に心当たりがあることなどお見通しの様だな。全く……恐いお人だ。」
一人残ったニーガルはハイマンスの背中を見ながらそう呟いた。
そして障壁に残された僅かなフォースの名残を見つめる。
「アストン……これはお前からの宣戦布告。そういうわけだな?」