廃陸の旅団
カムイは何も出来ずにクラナドの変わりゆく様を見続ける。
筋肉が異様に盛り上がり、身体から膨大なフォースを発するそれは、もはやクラナドの原形など止めていない。
最も変化が見られたのは髪の毛で、綺麗な黒髪が見る見るうちに白くなっていった。
「やめろよ……やめてくれよ。クラナドぉ!!」
目は充血し、まるで人ではない獣や魔獣のような雰囲気さえ感じる。
ようやく赤い光が治まるとクラナドは首をコキコキと鳴らした。
「ふぅ……死ぬかと思ったがなんとかなったな。」
宿主と認めたと言わんばかりにズズズッと音をたてながら、レッド・スフィアがクラナドの胸の中心に浮かび上がる。
「最後の方法はスフィアを体内の核に取り込むこと。とはいってもこれは重罪だし、スフィアを知り体内に取り込む微妙なフォース操作ができなければいけないんだけどね。」
カムイはクラナドの変貌ぶりに言葉を失ってしまっていた。
そんなカムイの様子をみてクラナドは愉快そうに笑う。
「これでもう俺は……カムイ!!お前にも負けない。才能だけでちやほやされているお前ね様なヤツにはな。」
クラナドは叫ぶ。
今までで味わってきた劣等感を、何もかもを、標的が違うことを何処か自覚しながらもただ、叫ぶ。
「俺はその証明がしたくて仕様がなかったんだよ。凡人でも天才を殺すことができるっていう証明がな!!だからカムイ……お前はここで死ねよ。」
クラナドは溢れんばかりのフォースを操作してカムイのような刀を作った。
赤い鎌の様な形をしたそれは、まるで死神の鎌の様に残酷で美しく。
その切っ先がカムイの首を躊躇無く吹き飛ばそうとした刹那。
『ガキィィィン』と高硬度な物体同士がぶつかり合う音が弾けた。
「ちっ、邪魔しやがって……」
カムイの前におどりでたその男がクラナドの非常な刄を受け止めていた。