廃陸の旅団
まばゆい光が治まる。
「……?何だったんだ今の光は?」
何も起きていない。
そう、誰もが思った瞬間だった。
「何してんだジン!!避けろ!!」
遠くから聞こえたカムイの声。
「は?避けるって言ったってニーガルは何もしてねぇじゃねぇか。」
ジンの瞳の先では確かに今もニーガルが、2つの剣を放った位置でたたずんでいる。
しかし――
「残念。カムイの言うことを聞くべきだったね。」
「――なにっ!?」
目の前にいたはずのニーガルが霧の様に消え、真横からニーガルの声がした。
ワケも分からず右方向へと回避したジンの背中に激痛が走る。
「がっ!!」
誰も居ないはずの場所から攻撃を受けてジンが困惑する中、カムイは状況が理解できていなかった。
「前にローザス副監に聞いたことがある。緑柱眼とは何を見るものなのかを。」
幾つもの残像をジンが見ていた時、カムイの瞳には常に1人のニーガルしか写ってはいなかった。
「緑柱眼とはフォース"のみ"を視覚化する能力。発眼状態下では見えていないのだろう?景色も人も遠近感も何もかも。」
カムイの瞳には、様々なフォースの濃度がサーモグラフィの様に映っていた。
それにより人や物、フォースの流れを読み取ることができていたのだ。
「カオス・フィールドの中、君とジンの見ている景色は違う。そんな差異ある世界で果たしていつまで援護ができるかな?」
刹那。
ニーガルのフォースが急速にジンのフォースへと接近する。
しかしジンにはまだニーガルがカムイと話をしている様に見えていた。
「ジン!!」
そうカムイが叫んだ瞬間、ジンが遥か後方の壁に叩きつけられる。
「まずはお前を先に始末してから、ゆっくりとカムイの相手をすることにするよ。」
ニーガルがそう不敵に囁いた頃。
カムイはわずかな右目の痛みを覚えていた。
着々とカムイの身体をそれは蝕みはじめていたのだ。