廃陸の旅団

ドバッと音を立ててニーガルの胸から大量の血が吹き出す。

「スフィアを自ら暴走させる術か……どこで知った?」

ニーガルの身体を抱き抱えオスカーは支えていた。

「……スフィア戦争で狂い逝く仲間を何十、何百と見て自己暴走も可能だと考えていました。」

吐血した為に口には血がたまりニーガルは喋りにくそうだ。

「この馬鹿弟子が、最後の最期に手間かけさせやがってよ。剣抜いた方が話しやすいか?ちゃんと弟と話してから逝けよな。」

駆け付けるアストンを見てオスカーが言う。

ニーガルがアストンを見つめる。

本当に本当に優しい目で。

「剣……そうですね。最期に剣が刺さってるのも何ですね、抜いてください。」

オスカーが剣を抜くとニーガルの傷口からまたおびただしい量の血が流れ出た。

力なくもたれかかるニーガルをオスカーは優しく床に寝かせた。

駆け寄ったアストンが血に染まるニーガルの手を握り締める。

「今私が治癒を……」

マールが駆け寄るのをオスカーが無言で止めた。

兄弟の時間はもう訪れることはない。

オスカーはマールの治癒の才能も知っている。

しかし、マールでもスクルドでも例えアーリアですら治すことはできないとオスカーには分かっていた。

「ニーガル……馬鹿野郎が。」






それからアストンとニーガルが何を話したのかは二人以外には分からない。

ただ分かるのはアストンもニーガルも最期は笑顔で、その代わりなのだろうか泣き崩れるマールがいたということだけだ。
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