廃陸の旅団


「アストン……アストン……」

震える手でニーガルはアストンの手を探す。

もはやニーガルには目の前にいるアストンすら見えてはいなかったのだ。

「兄さん僕はここだよ。ここにいるよ。」

アストンは力強くニーガルの手を掴む。

それを感じたのだろう、ニーガルはうれしそうな、安心したような優しい顔で笑った。

「アストンすまなかった。私は最低の兄だったね、己の正義の為に最愛のお前を殺そうとした……」

微かな声、アストンですら時折聞き取れないほどに本当に微かな。

「兄さんは最後まで正義を貫いたじゃないか。今までもこれからも変わることなく兄さんは僕の憧れだよ。」

凄く嬉しそうで、ほんの少し悲しげな表情。

それを見てアストンの目には堪えきれない涙が滲んでいた。

「……アストン、泣いているのかい?」

アストンはニーガルの姿を見てはっとした。

もはや手の感覚すら失ってしまったのだろう。

自分の手を握るアストンの手を、探していた。

「また虐められたのかい?大丈夫、お兄ちゃんが守ってやるからな……」

「兄さん……兄さん!!」

アストンの涙がこぼれ落ち、ニーガルの頬を伝う。

もはや耳も聞こえなくなったニーガルは、独り言をつぶやくだけだ。

「ああ……これでまた3人で仲良く暮らせるね。アストン。アルミナ…兄さ、ん。。。」



アストンの手を必死で探していたニーガルの手が力なく床に落ちた。

生気の無くなった瞳から、たった一粒だけの涙がこぼれ落ちていた。







「兄さーーーーん!!」





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