廃陸の旅団
友の帰りを待つ魂が一つ、この満開の星空の下に今宵世界に別れを告げる。

夜風は寒く、コートを羽織る一人の少年がその墓を訪れた。

「カムイ来てくれたんだね……」

少年は音にならない声でカムイを迎える。

カムイは墓標に一輪の、淡い青い花をそえた。

「クラナド。お前のことだから約束通りまだこっちにいるんだろ?」

「ああ……待ってたよ。」

カムイはクラナドの墓の傍に座り星空を仰ぎ見る。

クラナドも同じようにして星空を眺めた。

「馬鹿だなお前は。あんな約束なんて果たせるかどうかだって分かんないじゃないか。」

「うん。でも……カムイなら必ずやってくれるって信じてたから。」

クラナドは困ったような笑顔で笑う。

つられるようにしてカムイも笑った。

そこでカムイはポケットからイーブン・スフィアを取り出す。

金色のスフィアが、どこか寂しげにカムイの手の中で光っている。

「見てみろよクラナド。暴走したスフィアを浄化するスフィアなんだってさ。こうやってかざすと星空に溶け込んできれいだな。」

スフィアが夜空に溶け込み、星のように瞬く。

カムイは墓前にイーブン・スフィアを供えた。

「これでやっと言える。だいぶ待たせちゃったな。次に生まれる時はまた親友になれるといいな。クラナド……」

「君と出会えて本当に良かったよ。カムイ……」

闇にかき消されないように最期の言葉を少年達は振り絞る。







「「さようなら。」」








夜風が僅かに濡れた少年の頬を拭い、スゥッと消える様に去っていく。

カムイはそれから、しばらく星空を見つめていた。







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