廃陸の旅団
しばらくしてアルネアが話し始める。
「今回の任務は無属民に囚われているアーカー、スクアロを救出、保護することになります。」
「それはわかっているんだが、スクアロの居場所は判明しているのかい?」
天帝と称されるオスカーが十数年も探し続けている人物なだけに、その所在は明らかではなかった。
「実はある垂れ込みで、スクアロらしき少女と無属民のリーダー格、"白焔"のミルファがある場所へ向かった。ということが分かりました。」
「その垂れ込み、信憑性はあるのかな?」
「その点は大丈夫でしょう。公にはできませんが、信頼のおける者が可能性は有りと判断していますので。」
にっこりと笑うアルネア。
カムイはどうしても、その笑顔に違和感を感じてならなかったが、彼女を疑うだけの確信もなく、誰にも言わないでいた。
そして、そのことにスクルドが感付くが、やはり誰にも何も言わなかった。
「んで、その場所ってのは何処なんだい?」
ようやく喧嘩が終わったジンが尋ねる。
きっとマールに引っ掛かれたのであろう、痛そうな爪痕が右頬で、ミミズの様に腫れている。
「はい、私達がこれから向かう場所。それが――」
アルネアは棚から持ち出した地図を皆の前で広げた。
「『旧・マルク諸島』、通称『マルク廃島』です。」
広げられた地図は所々がひび割れて、紙はほとんどが日焼けしていた。
とても古い地図の様だ。
「うっえー。ほこりっぽいよこの地図ぅ。」
マールが鼻をつまんで、顔の前で手をパタパタとふる。
「マルク廃島は約20年前に地図から消されてしまいましたからね。この地図はマルク廃島が消される直前の物の様ですね。」
アストンがそう言うと、マールは鼻をつまんだままの可笑しな声で「ふーん。」と返事をした。