廃陸の旅団
白焔はあたりの空気すらも焼き焦がす。
「まずい、いくらオスカーさんだからって、ここまでの大火力に包まれては――!!」
遥か遠くで様子を見ていたアストンでさえも、マールによる守護が必要な程の強力な術。
その炎の爆心地とも言える場所にいるオスカーが無事であるはずがなかった。
「はははははっ。遂に宗家が本家を破ったぞ!!ざまぁないなオスカー!!」
高々と笑うミルファ。
その時、炎の中心でキラリと何かが光った。
「――双剣術、奥義『凪の不知火-ナギノシラヌイ-』」
ふっ。
と、一瞬にして炎が消滅し、空間が完全無風に包まれる。
「なっ……なんだ、何なんだこの技は!?私の炎が掻き消されただと?」
爆心地は地面が抉り取られ、真っ黒に焦がされていた。
その真ん中でオスカーは立っていた。
「こいつは双剣術の奥義の一つで、正当後継者にだけ伝えられる技だ。お前が知らんのも無理はない。」
マントは焦げ落ち、身体中に無数の焼き斬られたアザがある。
とても無事とは言い難い状態だった。
「しばらく使わなかった上に、大剣で代用したもんだから思うとおりにいかなかったぜ。」
「正当後継者にのみ伝わる奥義だと!?そんなものがあったと知ったら尚更に貴様を倒さねばならなくなったなオスカー。」
飛び出したミルファの肩口で、何の前触れもなく火花が散る。
「……おっと、話は最後まで聞くもんだぜミルファ。凪の不知火の真の能力は――」
ゴォォッ。と音を立てながら火柱があがる。
「な、なんだこの炎は?どこからあがった!?」
ミルファが急いで振り払おうとした瞬間、袖や足先、至るところに火花があがり。
瞬く間にミルファの身体を赤い炎が包み込んでいった。
「完全無風状態下に動いた物体を大気との摩擦熱によって発火、焼き殺す能力だ。さぁ――火種の海に溺れて消えろ。」
それはまるで、大海に無数の炎があがる不知火の様に。
無風空間にあがった火花が、炎の使い手であるミルファすらも飲み込み燃えていった。