廃陸の旅団
「はぁ、はぁ、はぁ。」
「お姉ちゃん、大丈夫?」
これだけの大人数に一度に、完全防御の術をかけたのだ。
リリーは疲労でその場にうずくまってしまった。
そんなリリーの背中を少年がさすると、リリーはにこりと笑って立ち上がった。
「大丈夫よ。私は、大丈夫。」
ゆっくりと砂ぼこりが晴れ、リリーの視線の先には怪我の一つもない人々の姿があった。
リリーは胸を撫で下ろす。
「あらぁ。すっかり立派な術師になったみたいねリリー。」
背後にいつの間にか現れた人物が、リリーを微笑みながら見つめる。
リリーは嫌な汗が伝うのを感じた。
「この殺気……まさか、あなたがケルセウムを?」
振り返り、見据えた先には信じられない人物が立っていた。
「そう、そこまで気付いてしまったの……なら生かしておくわけにはいかないわね。」
「くっ、あぁぁぁあっ『ターピュラン――
「眠りなさい。」
――ス』っ……。」
どさっ。と前のめりに力なく倒れたリリー。
大量の血はリリーの治癒の腕ではどうともできない程に、流れだしている。
朦朧とする意識の中でリリーが身体をわずかに起こす。
「しぶといのね。でも大丈夫、もうじきこの世界は終わり、新しい世界が始まる。あなた達はその礎となるのよ。」
ザッザッ。と音を立てながらアンバー・タワーへと向かっていく人物。
リリーはこの現状においてもまだその人物がケルセウムを襲ったとは信じられなかった。
何かにすがりつきたくて伸ばした手の先には、居ないはずの金髪青眼の顔があった。
「お姉ちゃん。お姉ちゃん!!しっかりしてよ、お姉ちゃん!!」