廃陸の旅団
アルネアは糸術を巧みに駆使し、その超人的なスピードでスクルドに襲い掛かる。
「まったくスリンダーほど厄介極まりない敵はおらんの。」
スリンダーの放つ孔気糸は、放たれた直後の突貫力は勿論、どこかにぶつかり張られた状態にあってもトラップや呪術補足の効果を発揮する。
故に、敵にスリンダーがいたさいの戦いの鉄則は。
糸を避け、張る前に裂け。というのが鉄則だ。
「流石は老師。この私のスピードに難なくついてくるばかりか、きちんと糸を断つとは。」
投げられた糸を回避し、空中で糸を断つ。
簡単な様に思えるが熟達の戦士であっても、一部の隙も許されない至難の業なのである。
「こっちも忘れるなよジジイ。」
伸縮、そして硬軟化自在な身体をもつロイ。
腕を硬化させ、伸ばしスクルドを襲う。
「こちらも厄介極まりない。ほっ。」
スクルドはその腕を受け流す。
正に、暖簾に腕押し、柳に風である。
「くっ。」
アルネアの糸を避け、後方に飛んださいにスクルドは脇腹に激痛を感じた。
弱まったフォースでは完全に治癒が出来ていなかったのだ。
「……くっ。」
スクルドは孫娘との再会を目の前に決断を迫られていた。
「レッド・スフィアを使い、雷狐瞬鍠状態ならば、なるほどヤツラを倒せるであろう。しかし、引き換えにワシの命は……」
孫娘に会いたいという願いが、冷静で偉大な戦士に迷いを与えてしまっていた。
時間はない。
スクルドはある覚悟を決める。