廃陸の旅団

一ヵ月後にカムイはまたニーガルの部屋を訪れた。

｢しかしまぁ。本当に一ヵ月で合格してしまうとは……嫌味だな君は。｣

ソファに悠々と座るカムイを横目に見るニーガル。

｢国家連合認定公務員試験の年間受験者数は一億四千万人そのうち合格者は二十人未満。みんな何年も勉強をしてやっとの思いで合格するというのに……｣

｢仕方ないでしょう、始めから脳の出来が違うんですから。｣

その時わずかながらニーガルは殺意を覚えたという……

｢さて本題に入ろう……君をこれからB.A.S.E.の職務認定試験を監督してくださるローザス･ウィザード副監の元へ連れていく。地獄耳でｸﾞﾁｸﾞﾁしたｸｿﾊﾞﾊﾞｧだから気を付け……｣

『ｺﾞﾂｯ、ﾊﾞｷｨｨｯ』

ニーガルの笑顔は脳天の激痛によって消えることになった。

｢ニーガル中将、また罰則を受けたいのかな？｣

ニーガルの後ろには背の高い女性が引きつった笑顔で立っていた。

｢カムイ･フロストマンだな？私が認定試験の監督をするローザスだ宜しく。｣

ローザスが握手を求めるが、その手はまるで何かを探しているかの様に不安定だった。

｢あ、カムイです宜しくお願いします。あの……失礼ですがもしかして目が？｣
ローザスの手を握り返したカムイが尋ねると、ローザスは笑う。

｢ああ、幼い頃に病気で両目の視力を失ってしまってね。｣

｢そうだったんですか……あっ。｣

その時ローザスの後ろに一人の少女が立っていることに気付く。

｢ん？あぁ。紹介しよう。カムイ、お前と一緒で今日認定試験を受けるリリー･ホフマンだ。とりあえず試験の説明をするからそこの部屋へ入ろう。｣

ｺﾂｺﾂとローザスの持つ白杖の音が響き、三人は奥の部屋へと入っていった。

ただ一人、頭を抱えてのたうちまわるニーガルをその場に置いて。