廃陸の旅団
気絶しているカムイに向けられた無情な攻撃。
マールとアストンすらも諦めかけた、その時だった。
「――?なんだ小娘。」
寸でのところで少女が攻撃を受け止めていた。
「汚らしい手をどけなさい。舞踊『森羅の舞』」
赤い扇子を広げ、少女が舞う。
魅了されてしまいそうなほどに妖艶な舞い。
「貴様……スクアロ。人質の分際で舐めた真似を。ナタリア!!我々に歯向かったら始末しろとの命令だ、やるぞ。」
「私に指図しないでもらえるかしら?あの方の言葉以外私を動かせないの。」
二人がかりでスクアロに襲い掛かるソニアとナタリア。
「ふふふ。いくらアーカーが特異な能力を使えてもこのブラック・スフィアがある限り私達には勝てないわよ。」
「それに貴様のエーテルとエクスフィールは戦闘とは程遠い能力だ。」
影縫いでスクアロの背後をとったソニアの攻撃を扇子で受け流すスクアロ。
しかし凄まじい威力の攻撃は完全に逸らすことはできず、スクアロが吹き飛ばされる。
そこへ待ち伏せていたナタリアの蹴撃が襲い掛かる。
「くっ。『柳の舞い』」
ゆったりとして自然体な舞い。
連続した蹴撃を受け止めるでもなく、ただ流れに身を委ねていく。
ナタリアの攻撃を完全に流したスクアロが詠唱を始める。
その言葉は聞き慣れないものだった。
「お仕舞いよ。『エーテル』」
美しい黄金色のフォースがナタリアとソニアを包んでいく。
「エーテルだと?それは他人にフォースを分け与える術だろう。」
「何故私たちにフォースを分け与える様な真似を……?」
黄金色のフォースが身体を巡り、わずかながらフォースが力強くなるのを2人が感じた瞬間だった。
「――はっ。なんだこれは?」
「ブラック・スフィアが作動しない!?」
いつの間にか2人を覆っていたまがまがしいフォースが消えていた。
しかし2人の体内にはいまだにブラック・スフィアが砕けずに残っている。
「スクアロ貴様、何をした!!!!」