廃陸の旅団
陥落
砂埃が払われ視界が晴れていく。
「おい、今の何の冗談だよ……」
爆発する間際にソニアが叫んだ名前にカムイは愕然としていた。
勿論それはカムイだけではなかった。
「そんなバカな……ローザス副監に限ってそんなことがあるはずが……」
アストンだって冷静でいられるはずがなかった。
信頼厚く、武・知・心に富む上官の裏切りなど信じられるはずがなかったのだ。
「実力、権力、そしてハイマンスにさえ絶対な信頼を置かれているローザスなら可能だな。」
淡々と話すオスカーをアストンが睨み付ける。
「……じゃあ聞くがエターナル・スフィアの管理は誰がやっている?各地へ自ら監査へと回るハイマンスなわけねぇだろ?」
「……確かにエターナル・スフィアの管理はローザス副監がされていましたが。あの人は忠義に厚くハイマンス総監への忠誠は誰よりも高かった。」
唇を震わしながら叫ぶアストンの額ではしたたる汗が光っていた。
「そうだな。だが……今のところハイマンスの警戒網を抜け、裏で動ける人間は只一人だ。違うか?」
「違いません。でも……」
オスカーとアストンの話の間にたったのはスクアロだった。
「今、私達がすべきなのは言い争いではありません。一刻も早くアンバー・タワーへと戻り真実を探ることです。」
冷静なスクアロの意見にカムイが賛成する。
「そうだな。それにスクルド老師のことも気に掛かる。」
「――!!ジジ様がここへ来ているのですか?」
会いたくて会いたくて、ただ無事を知らせたかった人物がそこにいることを知り、スクアロの表情がやわらぐ。
「よし、まずは老師のとこまで行こう。」
そして一行は駆け出した。
迎えに行く人がもうそこには居ないとも知らずに。