廃陸の旅団
スクアロの瞳から涙がこぼれ落ちる。
「どうしたのスクアロ?」
マールがそっと駆け寄り優しく背中をさすると、スクアロは袖でしっかりと顔を拭った。
「スクルドは敵と共にここで散りました。」
「――なんだと!?」
「そんなバカな!?瞬鍠のスクルドがあんな奴等と差し違えるはずがない。」
誰もが落胆を隠せなかった。
「ニーヴァス化した敵の特異な能力の前に、ジジ様は禁術を使わざるを得なかった。」
「……『雷狐砲』あの忌まわしい術か。」
オスカーの言葉にスクアロが頷いた。
「自らの心臓をスフィアとし、己の生命さえ使い果たし放たれる最高の術。ジジ様の最後の弟子によって生み出された禁術です。」
「自らの生命さえ使い果たす術。そんな……じゃあ本当に老師は……」
アストンが崩れ落ちる。
それを見てスクアロが言うのだった。
「やはり今回のB.A.S.E.襲撃はローザスの手によるもののようです。それを分かった上であなたは戦場へと向かうことができますか?」
カムイ、マール、ジン、オスカーはすでに臨戦態勢に入っていた。
ニーヴァスを仲間をも蹂躙し、スクルドの命をも奪ったローザスを放っておくことなど到底できないのである。
そして顔を上げたアストンの顔にも迷いなど無かった。
「……兄さんの信頼を踏み躙ったローザスを僕は許しません。」
フォースを纏っていなくとも感じる強さにスクアロが微笑んだ。
「そうですか……ではあなたに私のフォースを分け与えましょう『エーテル』」
先の戦いで使った術とは何かが違った。
スクアロの身体が光り輝き、胸の中心が真っ赤に脈を打ちながら点滅する。
その赤き光りが半分に分かたれ、アストンの胸へと移っていく。
「……なっ、なんだこれは!?身体が熱い。それに前とは比べものにならない強さを感じる。」
赤い光りが治まると、アストンの身体にフォースが漲っていた。
「これでアストンも戦線に復帰できるわけだ。ハイマンスも心配だし戻るぞ。」
「ああ。」
一行はアンバー・タワーを目指し急ぐのだった。
最後の戦いはもうすぐそこまで迫っている。