廃陸の旅団
脇腹に刺さった無数の孔気で具現化された糸。

その糸を辿り、裏切り者の正体を知り、冷静沈着なハイマンスが落胆に膝を落とす。

「お父様でも、そんな顔をなさるのですわね。如何かしら?信頼していた部下に、いえ娘に裏切られた気分わ。」

もがくハイマンスを見下しながら、ローザスは不敵に笑っている。

「貴様……『ターピュランス』」

「糸術『琴舞-キンブ-』」

孔気糸の壁が、最強と謳われるハイマンスの呪術を完璧にシャットアウトした。

「手負いの身でも虹神。私の計画の完遂の為に死んでもらうわ。」

ハイマンスの周りを囲んだ糸が、より集まり切っ先が針の様に鋭利な円錐形を造り出す。

その切っ先はローザスの視点にリンクしていて、ハイマンスの心臓へと焦点を向ける。

「……く、何故だ!!何故こんなことをするローザス!?」

ハイマンスの見間違いかもしれない。

しかし確かに一瞬ローザスは悲しい瞳をしたように見えたのだった。

「……全てを超える力が欲しい。欲なんて理由を考えたら至極シンプルなものですわ。」

そう言ってローザスはハイマンスへと手をかざす。

「それでは、ごきげんようお父様。」

ローザスの造り出した円錐形の突起物が一分の躊躇もなくハイマンスの身体を貫いた。
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