廃陸の旅団
アンバー・タワーは奇妙な静けさに包まれていた。
聞こえるのはサイレンの音だけ。
爆発音や何かが壊れる音もしなければ、人の話し声もない。
視界は闇に広がった爆煙に遮られていて、蛍光灯の元ですら先があまり見えないような状況だった。
「ひでぇ有様だな。タワーにいた兵士達もほぼ全滅。奇跡的に生きていたヤツも治癒は不可ときた。」
傷つき倒れた兵士達を、見限り残していかなければならない怒りを皆が感じていた。
「一つだけ気になっていたんだけどさ。そのローザスってヤツが軍で一番強いのか?」
ジンの言葉にアストンが応える。
「いえ、ローザス副監の能力は主に暗殺で力を発揮するものです。多人数を同時にしかも長時間の戦闘となるなら、彼女を越えるフォースマスターは少なくないはずですよ。」
アストンの言葉で、さらに浮かび上がる疑問。
「じゃあ何で、こんな一方的にB.A.S.E.がやられちゃってんの?ローザスのも、その仲間らしきやつの姿もないしさ。」
「更に気になるのはハイマンスの行方です。不意を突けたとしても彼を倒すことは簡単ではありませんから。」
「そうだな……ん?」
タワーの上層階、雲すらも見下ろせる場所でオスカーが生存者を見つけた。
身体を貫かれ、おびただしい量の出血をしていたその人は虫の息で、身体を痙攣させている。
それを見たオスカーが誰よりも早く、その人に駆け寄った。
「ハイマンス!!おい、しっかりしろハイマンス!!!」