廃陸の旅団
緑柱眼で見えた極細な糸の一部、針穴よりも小さなフォースの淀みを切り裂く。
自由になった身体で、無理矢理に止められていた腕を、思い切り振り下ろす。
「……くっ。」
カムイの刄はローザスの左頬をわずかに擦る程度だったが、ローザスの目の色を変えるには十分だった。
「ひどいわ。血が出てしまったじゃない。」
今まで意図的に押さえ込まれていたフォースが解放されていく。
その膨大なフォースに、数多の戦いを経たカムイですらも数歩後退するほどだった。
「本当、とんでもない親子だな……」
「そうかしら?とんでもない父親だったことは否定しないけれどね。」
にっこりと笑って、ローザスがゆっくりと両の手を広げた。
「――!?」
瞬間。
ローザスの足元から波紋が広がる様にフォースが辺りに散ったのを視認した時。
カムイのまわりを強靱な糸が格子状に囲んでいた。
「なっ、速すぎるだろ!!『砲掌斑』」
孔気刀のフォースを掌で乱回転させ、爆発を起こす。
爆発が止み、格子のフォースを確認しようとしたカムイは愕然とした。
「そんなんじゃ破壊できないわよ。この『ケイジ・オブ・デスパイア-絶望の檻-』わね。」
格子状に張り巡らされていたのは一つだけではなかった。
何重にも何重にも張り巡らされた強靱な檻。
一つを傷つけることすら困難な中で、カムイに見えてしまった現実は、まさに絶望するに値するものだった。
「終わりねカムイ。『ターピュランス』」
絶望の檻をも飲み込む乱気流が巻き起こる。
「――――くそっ。」