廃陸の旅団

底を尽きたフォースのわずかばかりの雫の様な力でアストンは呪術を放った。

「ローザス副監、あなたの教えを受けたご恩は忘れません。だからこそ、このなけなしの力であなたを止めます『シャイニング・フォール-堕光-』」

生み出した熱エネルギーを対象に向かって放つこの呪術は、アストンほどのレベルのマターならば使うことなどないほどの初歩的な呪術であった。

しかしこれが、マター最高級の力を持つアストンが、今振り絞ることができる限界であった。

ローザスに向かい光が落ちていく。

すると、光は寸でのところで弾け飛んだ。

「なっ……誰だあれは!?」

ローブに身を包んだ男がローザスの間に割って入っていた。

アストンの呪術に次いで向かっていたオスカーとジンが謎の男に襲い掛かる。

「邪魔すんな!!『真空波』」

「そこを退けぇぇ『結鎖・氷狼陣』」


2人の術が謎の男に向かっていく。

男はゆっくりと両腕を前に出す。

「勿体ない。それほどの器を持ちながら、これでは……」

素手で2人の術を受けとめ、フォースを開く。

「……なっ、んだと!?」

その瞬間。

パリンとガラスが砕ける様に掻き消された術を見て、オスカーですら愕然とする。

それは自身の記憶にはないことで、いくら戦闘直後とはいえ認めがたい事実だった。

「大人しく見ているが良い。今、ローザス様が最強の力を手に入れらる。」

卓越した体術を誇るオスカーとジンを軽々と地面に押さえ付ける男。

男はゆっくりとローザスへと向き直る。

「ああ、ローザス様……」

その頬には涙が伝っていた。



「さぁエターナル・スフィアよ、我が力の一部となれ。」

炸裂弾が弾けたように閃光が飛び散る。

その光が世界を不気味に照らしだしていた。








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