廃陸の旅団
「ほぉ、サーベラーか。なぜだ?私はてっきりエンジニアーを志願すると思っていた。」
ローザスがこういうのはもちろん五年前の事件があったからである。
天空へ行くのに必要な天空艇を造るには、最先端の技術が集結しているB.A.S.E.の研究員になるのが一番の近道であることは紛れもない事実なのだから。
カムイが未だに空を目指していることをローザスは知っていただけに、少し驚いていた。
「オレの目的は今はクラナドを救うことだけです。それにはB.A.S.Eに入ることが必要だし。自由に捜索するには前線にいた方が効率がいい。それだけのことですよ。」
確固たる信念。
それを現実のものとするために、先を見据える確かな目。
何よりもその強い意志にローザスは感心した。
「ほう」と呟き、笑いながら納得すると、ローザスは持っていた書類を二人に渡し記入させた。
「よし。事務手続きはこれで終わりだ。試験は十五階の闘技場で二時間後に始める。じゃ解散。」
それだけ言い放つとローザスはスタスタと部屋を出ていってしまう。
カムイもそれに続くようにして出ようと席を立った。
「あ、あの。」
か細い声が後ろから聞こえてカムイは振り返える。
「何か?」
リリーはモゾモゾと手を動かし、恥ずかしそうにカムイを見つめる。
「あ、私その、試験が不安で一人になると、その、恐いから一緒に居てもらえませんか?」
顔を真っ赤にして頼むリリーを終始面倒臭そうに見つめてはいたが案外優しいのがカムイである。
「分かりました。とりあえず上に行きましょう。」
「は、はい。」
二人はそのまま玄関口の休憩所に行くことにしてエレベーターにのった。
「だ……誰も私のことを心配してはくれないのだな。ははは……」
ただ一人、痛みにのたうち回るニーガルを残して。