廃陸の旅団
「もう…終わりじゃな。その砕けた両の拳では何もできまい。身体全体に負った傷は致死量じゃ、もはや詠唱することもできまい。もうあらがうな、さすれば楽に始末しよう。」

アストンは落ち着いていた。

砕けた拳は指すら動かすことができない。

身体を襲う痛みで意識は朦朧としている。

しかしそれでも最後の力を振り絞り二つ限りの術を唱えていた。

「凍てつけ『ヴァイゴレイス・フロスト〈旺盛な霜柱〉』」

砕けた右の拳を超零度の氷柱が包み込む。

間を開けることなく次の術が発動する。

「弾け飛べ『エクスプロージョン〈暴発する火球〉』」

突き出した氷柱をまとった拳を、加速させるように肘の付近が大爆発を起こした。

超加速した拳はゲルゴアの鍛え上げられた筋肉の鎧を貫き心臓を突き破る。

「ふむ。油断したわい。最後の力でこのような所業を成し遂げるか…実におもしろかった。」

二人はほぼ同時に床に倒れこんだ。
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