廃陸の旅団
「私はお前を信用しきっていた。数多いる軍人のなかでも志し高く、努力を惜しまない、お前は私の信頼できる副官だったのだぞ。」

ローザスは自分が信頼されていることなど分かっていた。

ローザスが昔から何よりもハイマンスに言って欲しかったことはそんなことではないのだ。

「だがなローザス。お前は私の自慢の部下である前に、何よりも自慢の娘だった。」

ハイマンスのその言葉にローザスは涙を流した。

いつでも軍優先で家族を顧みなかった父。

そんな父を見返し自分を認めてもらうためにローザスは女身ながらに鍛練しB.A.S.E.へと入ったのだった。

しかしローザスが入隊した後、ハイマンスは総監に任命され、家族と会うことなど滅多になくなってしまったのだ。

「お前がアブソリュートを首席で合格し卒業したこと。若干二十歳にしてB.A.S.E.入りしたこと。私は自身で見ることは叶わなかったが、周りから耳にしては鼻を高くしていた。」

今までその眼中に写ることなどないと思っていた父は、ローザスが思っていた仕事だけの人間ではなかったのだ。

「家族を顧みない最低な父親だとスクルド老師に相談したこともあるそうだね。あれは流石に堪えたよ。」

そう言って笑ったハイマンスにつられローザスは笑みをこぼした。
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