廃陸の旅団

「人類の進展だってどうせ、ほとんどの人は巻き込まれただけだろう？お前たちの勝手な研究で皆を巻き込んで、希望を与え、絶望を味あわせ、そして最終的には全てを放棄しようというのか!!」

七人は目を見開いた。

ただの１データでしかなかったカムイの、その何と大きな人間への愛であろうか。

「シュミレーションが何だ!!過去の過ちが何だ!!!人間てそんな悲しい生き物なのか？違うだろう。」

七人は静かにカムイを見つめ、その言葉に耳を傾けた。

「人間は弱くて、小さくて、愚かで、卑しくて、救う価値なんてないのかもしれない……だけど。だけど人間て温かくて、優しくて、心があって、小さいながらも世界と共存してきたんじゃないのか？そうやって、今まで生きてきて、これからも生きていくべきなんじゃないのか？」

その必死な形相こそ。そのたどたどしくも真っ直ぐな愛こそ七人の望んでいたものだったのではないか。


長い沈黙が部屋を包み込む。

時折鳴るｺﾝﾋﾟｭｰﾀのｳﾞｳﾞﾝという音が、部屋の静けさを何倍にも増加させた。

「カムイ…」

ﾊﾟﾁﾊﾟﾁと拍手の音が鳴り響く。

そしてクラナドが周りの六人に向い言う。

「どうだい皆。まるで目が覚まされるようじゃないか。老かいな我々の偏った思考にはない人間への希望、そして愛。もう一度だけ人間にﾁｬﾝｽを与えてもいいのではないか？」

六人はうつむき各々に何かを考えているのだろう時折うなり声が聞こえた。

「少し時間をくれ。」

「私もだ。」

また六人が席に着く。

「カムイありがとう。我々ももう少しだけ人間に希望を持とう。しかし、人類の再生は保留となった。結果を待ってくれ。」

クラナドが何かのスイッチを押すとカムイの意識が完全に途絶えた。