廃陸の旅団
「さて、本来ならば時間をかけて実行したかったのだがな。ま、善は急げってやつだ。」

ローザスが急に立ち上がったのでキディは真っ逆さまに落ちていく。

キディは器用に空中で身をよじると、見事着地してみせた。

「やつらは不定期にアジトを移す厄介な習性がある。焦ってはいけない、だが急がねばならない。今すぐ核下地区へと向かってもらうぞ。」

カムイはそう言われなくても今すぐに核下地区へと向かっていただろう。

クラナドの居場所が分かりかけているのだ寝る時間すら今のカムイには惜しい。

「あの、一つだけ聞きたいんですが。」

「ん?なんだ?」

カムイは神妙な面持ちで尋ねる。

「もしクラナドを救出できたとして、クラナドはやはり……」


ローザスはその冷酷な瞳を見られないようにする為か、カムイに背を向けた。

「どんな事情があれど罪人は裁かれねばならん。罪は償わなければならん。そんなことは言わずとも分かっているだろう?」

ローザスの言うとおりだった、しかし、やはりそう目の前で言われるのはつらかった。

「ならば、諦めてはどうかな?」

ローザスは気を落しているカムイに挑発的に問いただす。

「……いえ。クラナドは必ず俺が助けだしてみせます。そして罪を償わせます。」

はっきりと言いのけたカムイの姿に、ローザスはゆっくりと頷いた。

そして気を取り直すかのように手をパンと叩く。

「ではさっそくこの塔の最下階に降りて核下地区へと向かってくれ。最下階にはアストン准将がいるから彼に詳しい移動の方法を聞くと良い。リリーはすでに最下階にいる。」

「はっ、了解です。」

カムイは最後にまたローザスに敬礼をすると最下階へと向かっていった。
< 61 / 583 >

この作品をシェア

pagetop