廃陸の旅団
「つまり、核下地区に行くにはこの穴に身を投げなければならない、と?」

恐いもの知らずのカムイですらさすがに気が引けている。

せめて底が見えれば気が楽になると思うのだが、どんなに目を凝らそうとも導穴の底は確認することができない。

「うーん。みんな最初はそう言うんだけどね。一度やってみると病み付きになるらしいよ?」

リリーはアストンの言葉に"病み付きになる"とは「のめりこんでしまう」の意味ではなく、恐怖が植え付けられ文字通り「病気になってしまう」ということなのでは?と疑問がわいたがあえて口にはしないことにした。

「じゃあ、行きましょうかリリーさん?」

カムイは引きつった笑顔をしながらリリーの腕をしっかりと掴む。

びびっているのは見え見えなのだがリリーだって負けないくらいびびっていたので何も言えず引きつった笑顔をした。


どうやら人間本当に緊迫した状況になると引きつった笑顔になるようだ。

「あ、でも、今アストンさんが、あ、きゃぁぁぁぁぁあっ!!(病み付きになるって…)」

二人が落ちていくのを見送ったアストンは気分を悪くして救護室に数日入院したそうな。




< 63 / 583 >

この作品をシェア

pagetop