廃陸の旅団

「ここが核下地区か……教科書とかで見た通りに古代都市を模している建造物ばかりなんですね。」

カムイは辺りを見回す。

導穴に落ちる前の引きつった笑顔はもうそこにはない。

新たな世界にまぎれこみ希望に心が震える年相応の屈託のない笑顔だった。

「あ、あの……」

リリーの小さな声でカムイは現実に戻される。

「何ですかリリーさん?」

「その、そろそろ腕を……」

カムイは自分の手を見た。

リリーの腕をしっかりと握り締めている。

慌てて腕を離すとカムイは急に恥ずかしくなって体温が上昇するのを感じた。

でもそれはリリーの方も同じだった。

「それから、あの。もしよかったらリリーって呼んでもらえませんか?せっかく一緒に任務をすることになったのに堅苦しい感じがして……」

「分かりましたリリーって呼びます。リリーも俺のことはカムイって呼んでくださいね。」

二人はなんだか照れ臭くなり足早に歩きだした。

リリーはこの自分の感情が何かに気付いていたが、今までに芽生えなかったこの感情に少し戸惑いを感じていた。

と、まぁ。それでも、自分の感情に全く気付く気配のないカムイよりは数倍マシなわけではあるが。



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