廃陸の旅団
少しするとまた教室内がざわつきだす。
一人の女の子が教室中の皆に何かを耳打ちしてまわっていたのだ。
「"双剣-ソウケン-"のニーガル様が今日来るんだって。さっき機関長と他の先生方が話しているの聞いちゃった。」
教室の騒ぎ具合からしてもそのニーガルという人物はかなりの有名人らしい。
「聞いた?カムイ君。双剣のニーガルだって。通り名を持ってるなんて凄いよね。きっと凄く強い人なんだろうなぁ。」
「そうか?通り名なんて地方で活躍すりゃそれなりにあるだろうし。」
するとガラッと教室の扉が開かれ、一人の軍服姿の男が教室に入ってきた。
教室内に爆音のような歓声があがる。
「……っと、彼がそうか。」
その男はゆっくりとカムイに近づいて来た。
「君がカムイ君だね?宜しくB.A.S.E.から使いとして来たニーガル中将だ。」
眩しいくらいに綺麗な金髪金眼。
背が高く整った顔をしている。
後ろ手にしばっている、その金色の髪の毛が、開いている窓から迷い込んだ風に舞った。
差し出されたニーガルの手をカムイはしぶしぶと握り返す。
「今日の授業が全て終わったら機関長室まで来れるかな?君に是非とも見せたいものがあるんだ。」
そう言うとニーガルは返事も聞かずに出口へと向かい最後にこう言い放つ。
「それでは教室を騒がせてしまったことをお詫びします。アブソリュートの諸君、後々B.A.S.E.で再会することを祈っているよ。」
ニーガルが出ていく時には誰一人として拍手をする者も、黄色い悲鳴をあげた者もいなかった。
全員がニーガルのその、美麗な顔立ちと紳士的な振る舞いに見とれてしまっていたのだった。
「何を見せてくれるんだろうね?気になるなぁ。」
微塵も気乗りしていなかったカムイの横で、クラナドが目を光らせている。
「……なぁクラナド。」
「うん?なに?」
「放課後よかったら付いてきてくれないか?」
決して人と行動を共にしようとしなかったカムイからの提案。
クラナドの答えは勿論決まっていた。
「うん、良いよ。」