廃陸の旅団
見事にライトアップされた白い防壁の中へ3人は入っていく。

白い石畳の周りを色鮮やかな花々が飾り、見渡すかぎりの花園に白と黒、モノクロームの建物がその存在を辺りに知らしめているように優雅に建っていた。

「あそこに見えるのが集合修道院。ガブゼリスじゃ。」

失われた伝統技術によって完璧なまでのシンメトリーデザインを石材のみで実現している。

今でこそ設計技術やマルテリウムの発展により再現できるが、数千年前にこれほどまでの建造物を造ることができたとは信じ難いものだった。

「花の織り成す自然の色彩に異彩を放つモノクロの神殿……そうここはまるで」

「ヴァルハラ……」

この世界の神話には、天空より遥か上空に浮かぶ幻の都というものがある。

都には神々が住むとされ、そこへ行き着いた人間は新たな神として迎えられるという。

「その通りじゃ。セイクリッド・モースはヴァルハラをこの地に再現したとされている。」

「それじゃあ、ヴァルハラは実在するんですか?」

カムイの幼い時からの夢。

ヴァルハラへと行ける天空艇を造ること。

今まで夢の様に霞んでいた目的地がわずかに輪郭を表した――そんな気がした。

しかしロディーは静かに落ち着いた声で言う。

「いや、ヴァルハラは存在せん。まぁ、もちろん誰も天を目指せぬのじゃから、しないだろう……が正確な表現ではあるがの。」


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