廃陸の旅団
マールは神木の下へ歩くと、優しく手を当てた。
何だか哀しげでどこか愛しげである。
「ねぇマールちゃん。その……ここで何を掃除すればいいのかな?」
リリーは辺りを見渡す。
しかし周りには見渡すかぎりに砂と岩しかなく。
すでに枯れ果てたその木には枯葉の一枚もついてはいないどころか、下に散ってもいないようだった。
マールはリリーを見ると小さく言う。
「掃除なんてしないよ。ここはね、あの修道院の人が自分の罪を見つめ直す為の場所なの。」
「どういうこと……?」
「こうやって神木の側にくるとどうしても思い出すもの。スフィア戦争で失った物のことを……」
神木の側に座りじっと木を見つめるマールの瞳には二十年前の戦争の惨劇が鮮明に写っているようだった。
「でも、スフィア戦争の時って私達まだ生まれてないよね?だったら。」
「スフィア戦争は終戦して全てが終わったわけじゃない。反乱分子とされた者達はその後も虐殺され、身寄りのない者がガブゼリスに集まった。」
歴史でしかないと。
自分達は関わっていないのだと思い込んでいた過去の戦争。
憎しみの火種は、悲しみの欠けらは今尚広がり続けているのだと初めて思った。
「あの時、エターナル・スフィア《永久の宝珠》を手にした軍の謀略で私の両親は殺された。傷ついた『聖戦騎士団』の治療をしていたパパとママを軍は裏切り者として処刑したのよ!!」
マールは下唇を噛んで悔しさを押さえ込もうとしていたが涙が流れている。
「そんな……ひどい。」
憧れて入った軍だったが、初めてリリーは疑問を抱いた。
その時、カムイが何かの気配に気付く。