廃陸の旅団
「ま、両親が殺されたのも私がまだ一歳の時だったから記憶なんてないんだけどね。でもだから、二人の助けにはなりたいけど……私は軍に手を貸すことはできないの。」
「え……何故オレ達が軍だって知って……!!」
マールは二人から離れる様にして小高い丘を上っていくすると――
「そういうことだ、軍の回し者達よ!!」
いつの間にかカムイとリリーのまわりを白い鎧を着た者達が囲んでいた。
「誰だ!?」
2人が構えると鎧の兵士達も手に持った槍を向ける。
「我等、聖戦騎士団。このセイクリッド・モースの守護者であり、軍に秘宝を奪われた。貴様等などにブルー・スフィアを渡したりはしない!!」
マールはカムイとリリーを見るがすぐに目を逸らし、申し訳なさそうに騎士の後ろへと行ってしまった。
「この場所を汚した貴様等を生きて帰すつもりはない。ここで死んでもらう。」
騎士団のリーダーが手を挙げると一斉に騎士達が魔法の詠唱を始めた。
「これだけの数に一気に魔法を使われたら死んじまう。倒すか?」
カムイがリリーに小さく問う。
リリーは力強く首をふった。
「駄目よ。さっきのマールちゃんの話を聞いたでしょ?暴力で解決したってまた新たな連鎖を産むだけだよ。」
「だからってこのままじゃ俺達……」
「放てぇぇえっ!!!!」
戸惑う二人をよそに騎士達は躊躇なく魔法を発動した。
紅に燃え盛る炎のつぶてが2人に向かい放たれる。
炎のつぶては周囲を熱で歪ませながら2人を飲み込む。
「カムイ、私の後ろに隠れて!!私達を守って『神域』」
炎がぶつかり合い、火柱となった瞬間。
火柱の中から強烈な、でも温かな光が零れた。
騎士達の放った炎はその光に触れた途端に目標物を失ったかのように四方八方に弾け飛んだ。