廃陸の旅団
「カムイ大丈夫?……きやぁぁっ!!」

リリーがカムイに近づくとカムイの胸部を太い枝が貫いていた。

傷口からとんでもない量の血が流れていて、カムイには意識がない。

リリーは目の前の光景にうずくまって震えることしかできなかった。

「おい、慎重にだぞ。」

「しっりしろ少年。」

騎士達が慎重に刺さっている枝の上下を切り、カムイを神木の下から外に運びだした。

すぐさまマールが治癒を開始するがいっこうに傷は塞がらず、血が垂れ流しになっている。

「マール様ですら駄目なのか。じゃあ、この少年はもう……」

「縁起でもないこと言わないで!!私の……私の初めての友達なんだから。絶対に治してみせる。誰かブルー・スフィアを持ってきなさい。」

マールが怒鳴ると数人の騎士が神木の下を掘り、中からサファイアの様に煌めくスフィアを取り出した。

「ブルー・スフィアを使うことはならん。」

するとそこにロディーとマリアが現れ、ブルー・スフィアをマールに手渡そうとしていた騎士を止める。

「我らの宝を憎い軍人に使うことなどできぬ。カムイは見殺しにするのじゃ。」

ロディーの目は本気だった。

まるでスフィア戦争の最中に大切な人を奪った軍人を見るような、憎悪に満ちた瞳で傷ついたカムイを見つめている。

「そんなの知らないわ!!私はカムイを治すのよ。ブルー・スフィアを渡しなさいロディー!!」

「ならん。」

表情一つ変えぬロディー。

この一瞬一瞬にもカムイが助かる可能性は確実に減っていく。

「あなたがそう言うつもりなら私は力ずくにでもブルー・スフィアを渡してもらうわ『インパルス』」

「マール様!!いけません。」

騎士達が止めるのを振り切ってマールはロディーに向かっていく。

光輝く破壊の拳を降りぬこうとした瞬間。

「およしなさいマール。」

マリアがロディーの前に立ちふさがった。

マールは寸でのところでその拳を引っ込めた。

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