12年
現在
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あなたに、出逢えて、
良かった。
味気なくて、風穴のような、
或いは、
モノクロ色な、
私の時間が、
鮮やかに、色づき、
確かな時を刻み始めた。
晴天の春の日に、
シロツメ草一面の土手に寝転び、
淡いパステルブルーの春色の空と同化してしまったような、
穏やかにざわめいて、
静かに強烈。
そんな日々だった。
あなたは、
どうだっただろう。
あなたの優しさが、
君に出逢えて良かった、と答えさせるでしょう、ね。
でも、
多分、
私になど、
出逢うべきでは、
なかった。
どこまでもの平坦さを約束されて来た、
眩しいあなたの人生。
そこからの離脱。
あなたの道は、
脱線し、つまづき、転び、諦め、憎悪、虚脱、絶望。
あなたに良いことなど、
何一つなかった。
…はず…。
でも、ごめん。
結果、
あなたを不幸にしたとしても、
それでも、
私は叫びたい。
あなただけを、愛している……と……。
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ねぇ、綾さん。
孫娘が高校中退したって、どう思う?。
怒る?、気にしない?、
それとも、悲しい?。
ねぇ、綾さん。
私が産まれる遥か昔に死んだ爺ちゃんのこと、愛していた?、蔑んでいた?、憎んでいた?、それとも何も感じていなかった?。
ねぇ、綾さん。
女に産まれて良かった?。自分が産んだ四男二女のことを、憎んだり恨んだりしていないの?。
ねぇ…。
ねぇ…。
ねぇ…。
訊きたいことも、話して欲しいことも、聞いて欲しい私の愚かとか、たくさんあるのに、今となっては、会話は一方通行なんだね、綾さん。
散り始めた桜と葉桜のコントラストが、こんなにも穏やかで、儚くて、暖かな陽だまりの、その真ん中であなたは微笑んでいるというのに・・・。
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腐るというのは、物質的なものばかりではない。
一つの腐った心。
一つの悪意。
それらはあっという間に、無自覚的に、蔓延していく。
一つが二つに…四つに…八つ…十六へ…。
一つを始点に、放射的に、取り巻くもの、全てへ。
小さな町。小さな学校。
小さな家庭。
逃げよう!。どこへ?。
どこでも良い、
ここではない、どこかへ。
瀕死の心では、
濁った水さえも、時には救いのように見えるだろう。
やがて、濁ったオアシスのような世界の底で、私は束の間の安息を貪る。
ただ、自分の心を守るために。
私は、誰かの、温かく差し伸べられた手を、待っているのだろうか?
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