虹色サイダー
「貴様は帰れ」



しかもこの状況でもそれ言う?


もうオレ、こいつわけわかんねぇ。



「これで帰っても消化不良だっつの……手伝うから」



溜め息をぐっと堪えて絞り出した声に、男は渋々といった顔、いや、至極嫌そうな顔で「仕方ないな」と答えをくれた。


すんごい偉そうなんだけど、こいつは一体何者だ。



思李、お前ほんとにこれでいいのか?



まさか「顔が良ければ全て許せる」とかいう境地に辿り着いたんじゃねぇだろうな。



そんなことを思っていると、男は思李を抱き上げてさっさと家の中に入ってしまった。


慌てて追う、縁側から申し訳ない。



人ひとり担いでるとは思えない速さで階段を上ってゆく男の背中が、なんだか憎らしかった。


その背中からはみ出て見える、思李の脚が白くて、髪が優しく揺れて、余計に。



やっぱオレってまだまだガキだな。


 
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