虹色サイダー
男は迷いもせずあっさり思李の部屋のドアを開く。


続いて入るオレの方が寧ろ戸惑う。



だって、中身も匂いも、なんにも変わってねぇし。


これで冷静でいろ、っていう方が可笑しいだろ。



だがそんなオレの迷いも、思李をベッドに寝かした男はその表情で一蹴した。


目は口ほどに物を言う、とはよく言うが、それがここまではっきりわかるのも、なかなかいない。



わかってるよ、余計な気は起こさない、って。


あんたと喧嘩しても、負けるに決まってる。



雑念を取り払って、ベッドに足を向ける。


気を失ってるだけならいいけど、さすがに楽にさせてやらないといけない。



そう思って、手を伸ばせば。



「何を考えている」



手首をがっしり掴まれ、また熱のない声が降ってくる。


 
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