虹色サイダー
「ごめんごめん、ぼーっとしてた。虎、湯に浸かっていいよ」



またしても呆れた表情でこっちを見ていた虎と入れ替わる。


やっぱり心の中を読まれてるみたいだ、観察眼が鋭いんだろう。


じゃあうちの馬鹿素直な思李ちゃんなんか、遊ばれ放題だろうなぁ。



「そういえば」


「ん? なになに?」



シャンプーを手に取ったところで虎が口を開く。



「お前の妹の名を知らぬ」



なんと、あいつ名乗りもせずにいたのか、まあ俺もさっき名乗ったばっかりだけど。



「あいつはね、思李。思うに李(すもも)って書いてコトリ」



どうかと思う親、第二弾。



「雀みたいだな」



ごもっとも! なんと名前を決めるときに病室の窓に雀が止まってたから「ことり」なんだなぁ。


漢字が可愛いだけ、まだマシだけど。



「元気な娘だな」


「あはは、そうそう。そこだけが取り柄かも」



シャンプーしながら虎を見ると、ちょっとだけ顔が綻んでいた。


さっきの状況を考えても、割と気に入ってるんだろう。


 
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